熱狂の履歴書

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有限会社e.K.コンサルタント 代表取締役

森 康彰

ビジネスチャンスは地方にあり
地方で働き地方で稼ぐ

このまま都会に住み続けるのが正しいのか。それとも心機一転、地方暮らしを選択してみるべきなのか。現在の仕事や将来の生き方などに不安を抱え、「都会か、地方か」の問いに心が揺れ動いている人も多いだろう。そんな悩める現代人に向けて『地方で働き、地方で生きるという選択』を上梓し、新たな人生を選ぶきっかけづくりを行っているのがe.K.コンサルタントの森康彰氏。地方都市・岡山で起業し、売上を伸ばし続ける森氏に、移住をすすめる理由を聞いた。

複数の選択肢を持って視野を広げる

首都圏の大企業に就職できれば、給料は高いし、将来も安泰だ。そんなモデルは、過去の話になりつつある。世界の上場企業の時価総額ランキングで、1989年には上位50社中32社を日本企業が占めていたが、いまではトヨタ自動車1社のみ。経営環境の悪化にともない管理職のポストが減少し、働き盛りのビジネスパーソンが昇進するチャンスも減っている。

「景気の低迷により、経営のあり方は大きく変わりました。企業は効率性を求め、遊びや余裕といったムダを削り続けています。その傾向は都市の規模が大きくなるほど強く、多くの大企業が本拠地を構える首都圏に顕著です。効率性ばかりを求める生活に息苦しさを感じている人も多いのではないでしょうか。一度、『都市生活は豊かだ』という思い込みを捨て、自分自身が求める豊かさとはなんなのかを考えてみる必要があると感じます」

最近は地方創生ブームの影響もあり、首都圏一極集中の流れに歯止めがかかっているようにも見える。

「忙しない日常にメンタルをすり減らし続けている人が多い。子どもの頃からさまざまなことを我慢して、頑張って手にいれたものを失いたくないという心理がハードルになっているのでしょうね。コロナがあって世界が大きく動いているこの時期に、複数の選択肢があると知ってほしいのです」

会社の設立10年の節目に岡山国際ホテルで行った経営計画発表会。「地方でもビジネスチャンスはあること。地方都市の未来について想いを伝えることができました」と森氏。

地方都市こそチャンスがある

今でこそ、地方都市に活路を見出すビジネスパーソンは少なくないが、森氏が故郷・岡山にUターンしたのは2009年のこと。当時は「稼ぐなら大都市」という考え方が一般的だった。だが、森氏には先見の明があった。

「優秀な人材は大都市に集まってしまい、地方都市は手薄になります。大企業は“我が社のエース”といえる人材を大都市で勝負させますからね。それに、地方都市は首都圏には存在する便利なサービスが導入されていないケースもある。地方都市はビジネスチャンスが大きいと考えました」

e.K.コンサルタントを設立し、岡山県内を中心に資産運用の提案や保険商品の販売、コンサルティング業務を開始した森氏。ライバルが少ない地方都市であるが、その環境に甘えて、周囲と同じことをやっていては意味がない。森氏は必死に勉強に励んだ。

「若い頃からさまざまなジャンルの本を読むのが好きで、起業に際しては法律学や経営学を徹底的に学びました。相続税法に関しては、とても詳しくなりましたね。事業は順調で、1年目に3000万円の売り上げを達成。5年後には3億円に到達しました」

急成長を遂げたe.K.コンサルタントだが、森氏の理想はもっと先にある。

「1000人以上の従業員を抱え、上場するところまでは持っていきたい。同時に後継者も育てていきたいですね。人材を厚くすることで、地方都市はさらに元気になっていくと感じます」

その土地に住んだことがないからわかる魅力も多いと考える森氏。自身も、休日には家族を連れて各地を巡っている。写真は、隠岐諸島でSUPをした時のもの。

地方出身ではないからこその視点も重要

地方都市にこそビジネスチャンスがあると話す森氏。特に、優れたスキルを身につけたU・Iターン者は、独立・起業しても成功する期待値が大きいという。

「地方を改善することができるのは、“よそ者、若者、ばか者”だといわれます。長く住み続けている人は地域独自の慣習やしがらみに馴染んでしまい、なかなか変革に臨めない。その点、よそ者はフレッシュな発想で新しい事業を立ち上げることができます。しかも、地方での起業はゼロイチでなくても構いません。これまで得た知識やノウハウをその地域に合うようにアレンジして提供するのでもいいのです」

森氏が手がけるIFA(資産運用アドバイザー)ビジネスも、地方を選んだからこそ大きなシェアを獲得できた。都心のIFA業界はすでに多くの事業者が参入しているが、地方はこれからだという。

地方経済の起点となる地方銀行は近年経常利益が横ばい、純利益の減少など金融業界自体が疲弊している。数字だけをみると地方参入に二の足を踏む人も多い。しかし、森氏は厳しい環境にあえて挑戦することで、ビジネスを切り開いてきた。

「中国地方で楽天証券にIFA事業者として登録したのは、私が最初です。業績は想像以上の勢いで伸び、新型コロナウイルスの影響を受けた’20年でさえ、前年比120%の成長を遂げることができました」

地方には“ブルーオーシャン”が広がっている。独立・起業を目指すなら、地方を選ぶというのも魅力的な選択肢だ。

「徳島県の剣山をツーリング中、山頂付近で樹氷に遭遇しました。日中走ってテント場で焚火を炊き、葉巻を吸う男くさいキャンプは最高ですね」と話す森氏。仕事と休日のバランスも大切にしている。

豊かで楽しく生きるための人生設計を

「私が故郷である岡山にUターンしたのは、休みなく働くスタイルに疑問を持ったから」と森氏は言う。大学卒業後、映像制作の仕事に携わっていた森氏は、過酷な作業により体調が悪化。30歳の時に倒れてしまった。

「2日半、一睡もしないで仕事ということもありましたからね。そこで、体を整え直すためにも故郷である岡山に帰ることに決めました。再出発の地に故郷を選んだのには理由があります。岡山には両親や親しい友人がいる。でも、故郷に戻ったとなると、みんな心配するんですよ。大切な人たちを安心させるためにも頑張りたいとモチベーションが高まりました。人によって考え方が違うかもしれませんが、私は知人が多い場所のほうが頑張れるのです」

岡山に帰ってからは、1日の過ごし方も変わった。朝は小学生の娘をバス停まで送り、ベンチに座って他愛ない話をする。日々の会話が積み重なり、毎日の活力になる。またe.K.コンサルタントは、岡山のほか、高知、四万十、米子、東京と支店があり、社長として各店を飛び回るだけでなく、高知ではサーフィン、冬の米子ではスノーボードと24時間全てを楽しんでいる。

「体験する遊び方が多くなりましたね。最近、夢中になっているのがキャンプ。アウトドアって、やっぱりいいですよ。目の前の自然を利用して、自分で楽しみ方を見つけていく。キャンプってこんなに創造的な行為だったのかと改めて気づかされます。人生がつまらないのは、何もないからではなく、自分が楽しむための工夫ができなくなってしまったから。工夫をすれば地方も、もっと経済的に豊かにできるはずです。地方の潜在的な能力を引きだして会社を大きくする。そして若者たちに、“地方で働きたい!”と思ってもらうきっかになれるよう、これからも走り続けます」

人生を豊かにするギアアイテム

仕事だけではなく、趣味を大切にして生きる森氏。バイク、サーフィン、キャンプ、スノーボードなどアクティブ系のほか、ワインや葉巻、コーヒーにも夢中だという。

「ワインは都会ほど店の数は多くありませんが、アイデア次第で楽しみ方は広がります。自宅の向かいにプライベートサロンがあり、ソムリエやシェフに来ていただいて食事会を開催。借景で楽しむ山の景色も美しく、すがすがしい気分でワインを満喫しています」

※掲載内容は2022年6月28日現在の情報となります。

森 康彰

mori yasuaki

有限会社e.K.コンサルタント代表取締役
株式会社レクスト共同出資者
1999年琉球大学理学部海洋学科卒業後、テレビせとうちクリエイトに入社し2001年に退社。退社後は沖縄にてフリーで映像制作に携わり、2009年よりe.K.コンサルタントで岡山県を中心に一般向けに資産運用の提案、コンサルティングを行っている。また、現在はリクルート支援事業を行うレクストの経営に共同出資者として参加、学生に岡山の企業の魅力を伝えるイベントをNPO法人だっぴと共同開催するなど、Uターン就職促進に力を入れている