いいものを手渡せば いいものが返ってくる
「27歳の時、いつか日本一幸せな家づくりをする会社を作ってやるって決めたんですよ」
1989年に札幌で創業、現在は東京、名古屋、大阪でも展開する一級建築士事務所ハウジングオペレーションアーキテクツ(HOP)。その代表取締役会長・石出和博氏は、当時を振り返って静かに笑った。
「無鉄砲ですよね。私が建築を志したのは27歳。遅いスタートだったにも関わらず、自分で会社をやる気でいたんですから」
現在HOPは高級住宅を手掛ける企業として躍進を続けている。営業をいっさいせず、受注は紹介やオーナーからの直接の依頼のみ、一軒一軒細やかにつくられる邸宅は芸術的ともいえる高級なデザインとして噂を呼び、全国で依頼が殺到。そんな信頼の厚い建築家集団のスタートは、石出氏の27歳の時の決心から始まった。
「27歳からなんて、どこの建築事務所も採用してはくれませんでした。どうしても入りたければ、手弁当で給料はナシだと。私は未経験だからそれでもかまわないと思いましたが、周りを見ると建築事務所で働く20代の若者のほとんどは、当時の金額にして6万円ももらっていない。人気の職業ですから『若者に学ばせてやる』という考え方だったんです。そんな業界に未来があるのだろうか、早く自分が社長になって、誰よりも若者に給与を払う会社を作らねばと、強く感じたんです。